(1) 地震火災からの逃げ地図の作成にあたって

・地震火災は、その発生場所や延焼方向が一様ではなく、予測が非常に難 しいが、逃げ地図ワークショップを通して、その地域の地震火災の潜在 リスクや脆弱性を認識して、避難に関する事前の対策を講じることは重 要である。

・地震火災は初期消火が困難であることから、その被害を逃れるには、建 物の耐震対策および防火対策が基本であるが、延焼火災から安全な場所 へできる限り速やかに避難することが重要である。

・災害時にどこを通ってどう逃げるかという定めは特にないことから、状 況に応じて、個々の判断で(あるいは住民間の誘導により)安全な避難 ルートを選択する。

・逃げ地図作成の目的は、事前の防災(減災)対策を講じるためのリスク・ コミュニケーションであり、地図作成そのものではないことを十分に認 識し、その目的・目標を確認した上でワークショップを開催する必要が ある。特に地震火災リスクの大きい地域は道路が細分化され、色塗りに 多大な作業量を伴うことから、色塗りに注力しすぎないように留意する。

(2) 地震火災から安全な避難場所・避難路とは

1地方自治体が指定した広域避難場所 火災の輻射熱から身体の安全性を確保するには 10ha 以上の面積が必要。 2広域避難路(幹線道路):原則幅員 15m 以上

大火災時の広域避難場所への避難を想定して整備された幹線道路。延焼を 遮断し、避難者の安全を確保するために遠藤建築物を不燃化(沿道 30m 幅の建築物の高さ 7m 以上、不燃化率 70% 以上)

3地区防災道路(主要生活道路):原則幅員 6m 以上

地区内から広域避難路・広域避難場所へ逃げるための主要な道路。地区内 の延焼拡大を抑制し、近隣の火災から安全に避難するために沿道建築物 を耐震・不燃化(高さ 5m 以上、間口率 70% 以上)することが望ましい。

4緊急避難路(敷地内通路)の確保

身近な避難路が閉塞したり沿道火災で逃げられなくなった際に、反対側か ら隣接敷地を通って緊急避難するための通路。必ずしも通路の形状であ る必要はなく、隣接敷地との間の塀に扉や避難用の階段を設置しただけ のものもある。

(3) 地震火災からの逃げ地図作成の手順

1地震火災に関するハザードマップの入手

・都道府県や区市町村によっては地震火災に関するハザードマップを作成・ 公開しているが、一律ではないことから、どのような種類のマップがあ るか把握し、入手する。

例)国土交通省ハザードマップポータルサイト→ http://disaportal. gsi.go.jp/bousaimap/index.html?code=1

・火災危険性に関するハザードマップは、町丁目別に危険度を5段階表示 したものが多いが、逃げ地図作成のベースマップにはなりえないため、 防災対策を検討するための参考資料として活用する。

・地震火災からの逃げ地図を作成するにあたっては、木造建築物が密集し た区域を表示した火災危険区域図を用意することが望ましい。具体的に は、GIS(地理情報システム)を活用して隣棟間隔 6m 以内の木造建物 が 5,000m²以上連担している区域を表示する。

2避難目標地点の設定

・地震火災により大規模な延焼火災が生じた場合は、広域避難場所の入り 口が避難目標地点となるが、一時避難場所に集合し、安全な広域避難路 等を経由して向かうことが想定されることから、避難目標地点は段階的 に設定することが望ましい。

・対象地区に広域避難路が整備されている場合は、広域避難路と交差する 道路の交点を避難目標地点として定める。対象地区に広域避難路が計画 されている場合は、広域避難路の計画路線と交差する道路の交点を避難 目標地点として定め、現状の場合と比較すると、広域避難路の整備効果 が一目瞭然でわかる。

3 避難障害地点の設定

・火災危険区域は通行上危険性が高いため、その境界部は避難障害地点(×) として記し、それを避ける経路を選択する。

・幅員4未満の狭隘道路に面して老朽木造建築物または老朽ブロック塀が ある場合は、そこを避難障害地点(×)として記し、それを避ける経路 を選択する。

4 避難時間の可視化

・避難目標地点から逆算し、単位時間ごとに色分けを行う。避難にかかる 歩行速度は 43m /分とし色分けを行う。

・一般に夜間の歩行速度は昼間の 80% 程度低下することから、歩行速度 を 34m /分として避難時間を可視化する。

5 避難方向の図示

・地震発生時は倒壊した建物等からの救護救援、火災発生時は初期消火が 重要であるが、地震火災時は適切な避難誘導が重要である。

・火災発生地点やその延焼方向は一様でないことから、実際には状況に応 じて臨機応変に避難する必要があるが、逃げ地図作成時には想定される 状況について話し合いながら、避難にかかるリスクを避ける方向を検討 することが重要である。